ニュースで東京大学グループががん細胞を狙い撃ちするカプセルを開発したとありました。仕組みの説明を見ましたが、素晴らしいアイデアと技術の融合ですね。
このカプセルは、放射線治療に分類されるものです。放射線治療とは、がん細胞がある部分に直接放射線を当て、がん細胞を破壊してしまうというものです。もちろん放射線は線量が多いと危険なものです。基本的には治療の最初の段階から使う物ではありません。また、治療出来る癌の種類が限定されています。食道がんなどは放射線治療との相性が良いです。これは想像すれば理解出来ると思います。放射線は体を突き抜けていくので、体の内部にあるがん細胞を放射線で狙うと、他の臓器を傷つけてしまう可能性があるからです。その点、喉などは放射線を当てやすいということです。この治療法は制限があったわけです。
このカプセルのスゴイところ
放射線治療は、癌の進行度や患者の体力などをみて手術が出来ない場合や放射線治療との相性がいい癌の場合しか選択出来なかったわけです。どちらかというと、最終手段的な治療法という認識です。一方、抗癌剤は、血液が全身にまわるのを利用して、全身に効果のある治療法です。全身に効果があるのでどこのがんに対しても効果が期待できる一方、健康な細胞にもダメージを与えてしまうという欠点があるわけです。
さて、記事にあるように、がんの周辺にある血管には、特有のごく小さな穴があるという事実から
・その小さな穴を利用出来れば?
・穴があるのはがん細胞の近くの血管なので、穴の先で効果を発揮すれば?
・穴を通る大きさのカプセルに効果を発揮するものを入れておけば結果的にがん細胞のところにカプセルがたくさん溜まるのでは?
・効果のある薬剤を血流に乗せるのではなく、血流に乗っている時点では何も効果を発揮しないカプセルをたくさん流してがん細胞にカプセルを送りこめばいいのでは
・カプセルを流して一定時間が経つと全身のがん細胞のところにカプセルたちはそれぞれ集まっているはずだ。ここでスイッチを入れたら攻撃を始めるような仕組みがあればがん細胞だけうまいこと攻撃できるのでは?
・カプセルにガドリニウムという物質入れておけば、外から中性子線当てれば放射線が出てカプセルのまわりの細胞を破壊できる。つまり中性子線を攻撃開始のスイッチに出来る
・この仕組みによって、抗癌剤のように血流をとおして全身のがん細胞に到達し、場所によっては使えなかった放射線治療が全身のがん細胞に対してピンポイントで的確に使えるはずだ
ということでしょうか。しかし血管にあいている穴を通る大きさのカプセルは、直径2万分の1ミリという小ささ。ガドリニウムをいれたその小ささのカプセルを作るのもスゴイ技術ですね。
この方法なら、使えなかった放射線治療を全身のがん細胞にたいして行う事が出来、患者の負担も軽くなるわけです。マウス実験で効果が出ているところまできているのもスゴイ。
気になるところ
素人意見として考えるなら、
・その特有の小さな穴というのは、本当にがん細胞の周辺”のみ”にあるものなのか。正常な臓器まわりの血管に穴があるケースはないのか
・カプセルにいれておくガドリニウムの量によって放射線の効果の範囲、線量の強さが変わるのだろうか。その適切な量の調整が難しそう
その他の癌の最新治療
癌は免疫細胞の働きを阻害して細胞分裂を繰り返すたちのわるい細胞ですが、その免疫阻害を邪魔して免疫細胞に通常通り働いてもらってがん細胞を退治してもらうという免疫療法で少し前にニュースになっていましたね。
少しずつですが、がんという病気に対する負担の少なく、効果のある治療法が出てきているように思います。医療も日進月歩で、癌も治る病気になってきているとはいえ、まだまだ大変な病気です。今や国民の2人に1人は癌になるというこの時代、こういう明るいニュースはとても嬉しいことです。専門の医者でない人でも、一般常識として色々な治療を知っておくというのはいざという時に備えて大事なことだと思います。