[書評] 夏目漱石 門 暗くリアルな人間の心理描写は読む人によって捉え方が変わる

まさに大人の小説といった内容です。大人の恋愛や心理のダークな部分を徹底的にあぶりだしたというような感じ。

「それから」という作品もなかなかくせのあるねっとりとした作品ですが、これもまたなかなか。

カラッとした暗さ。つつましやかな生活を送らざるを得ない心理と、現実逃避と人生。

大人の恋愛というのは色々な形がありますが、これは主人公の宗助が親友の内縁の妻を奪い、そのうしろめたさからひっそりと生活しているところにいろいろと現実の問題が襲ってくる、主人公の性格もあってなかなかの現実逃避っぷりを見せてくれます。そこは楽しむべきところでしょう。

読む人によっては非常にやきもきしたり、理解できないといって本を投げ出すほどあわない人もいると思います。

逆に、人生うまくいかなかったり、不器用だったり、悩みがある人なんかは共有する部分が多いと思います。

大人になると何かと悩めることは誰しも持っているはずですから、結果として読んで何かしら響くものがある人は多い作品なのでは。

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非常に夏目漱石っぽい作品

まぁそりゃあ夏目漱石が書いてるわけですから当然といえば当然ですが、神経衰弱という単語も出てきて、とにかく神経衰弱が書きたいんだなというのが伝わってきます。非常に不自然な感じで神経衰弱をねじ込んできているというか、強引にねじこまれているというか、とにかくおれは神経衰弱について語りたいんだ感が出すぎているのが若干気になりました。このときはこういう小説がとにかく書きたかったんでしょう。

人間独特の、時が解決するしかないようなひきずる問題について主観的に感じさせられます。結局時間でも解決できなかったりするし、身をえぐられるような思いや出来事と向き合う人間・人生の難しさを考えさせられます。

大人になると、ただでさえ日々色々と悩みと戦い、なんとなく仕事にかこつけて現実逃避などしてしまうものです。むしろそうしないと生きていくのは難しい。忘れるというのは非常に重要な人間の能力なんでしょうね。

それから・門 (文春文庫)

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