[書評] フランツ・カフカ 変身 いつ読んでもドキドキする楽しさと深さ

ある朝、目覚めたら、巨大な虫になっていた・・・

こんな怖い想像、したくもないようで、だれしも一度くらい考えたことがありそうなテーマ。まぁ、最近でいうところの、ハンターハンターのアリ編なんかで見たあの巨大人間アリのような虫を想像しながら読んでました。いや、もっとリアルだったな。虫。げじげじ(ムカデ?)を大きくしたようで、それでいてそこまで足がおおいわけでもなく、スーパーマリオに出てくる足の多いムカデっぽい敵のようなものを私は思い描いていました。

まぁ、そんなこんなで主人公が虫になるんですけど、意思はある。理性も人間っぽい。けど当然しゃべれないし体は虫なのでそこまで自由もきかない・・・

そしておそろしいことに、虫の生態は踏襲しているので虫が好きそうなものを食べてしまうし志向も虫っぽい。まさに虫になった人間という感じで、そこのリアルさがこの作品の最大のウリでしょう。非常に怖い。

何考えているかわからない、虫って怖い、っていうあのコワさ。

子供のころはあまりそんなこと考えてないので虫も平気で触れるが、大人になると何考えているか理解できない雰囲気のコワさが出てきて(そのくせ素早く動いたりするし)、触れなくなりますよね。

まぁ虫を見る機会がぐっと減るので単純に耐性がなくなってビビッてしまって触れない、ってのが今の自分なんですが・・なのでこの作品の得体のしれない読後感の悪さみたいなのが、かえっていい作品なんだなと実感させられたというか。

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リアルな現実の比喩という見方

物語は直球で進んでいく感じです。虫になって、家族は最初びっくりするけど、なんだかんだで面倒をみて・・・けどその虫のせいでいろいろ不便で・・・生活に支障が・・・という、まぁ当たり前の現実路線で進んでいきます。

これが、例えば突然家族が事故等で障碍を抱えることになり、家族が四六時中面倒を見ないといけない状態になった場合を例えている、などの見方があるというのは、あとからそういう考察を見て、はーーなるほどー、と思いました。社会的な深いテーマを考えてこの作品を書いたのか、はたまた面白いネタを考え付いたのでそのまま勢いで小説にしたのか、思いをはせながら読み進めるのも楽しいでしょう。

とても読みやすい反面、読むときの年齢や状況に応じていろいろな見方ができる物語なんだろうなと思います。

すぐ読めますし、なんというかさすが名作というシンプルさも良いです。

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