[書評] 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか とんでもない怪物の歴史が面白い

文庫本で600ページくらいでさらに上下巻と、かなりのボリュームですが、もう、間違いなく、買いです。

買って読めばいいです。
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) (新潮文庫)

格闘技に詳しくない私でも、丁寧な解説とともに面白いストーリーで、絶対引きこまれます。格闘技に詳しくなれますし、格闘技の魅力とはこういうものだ!というのがいやでも体に入ってきます。格闘技の世界に心地良く侵食されましょう。

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木村政彦とは?

この本を読むまで、私は聞いたこともなかったです。かたや、力道山は名前くらいは聞いたことある。そんな感じでした。ところがどっこい、昭和の巌流島と言われた勝負で、TVが普及し始めた時代に、視聴率100%で国民皆が見ていた試合のファイターというじゃありませんか。全然知らなかった・・そこまで有名なら、名前くらい今までの人生で聞いていてもおかしくないでしょうに、、なぜ?

こういった謎も、本書で魅力たっぷりに解説されています。柔道の歴史というのは実に複雑で数奇な運命をたどって、こんにちオリンピックでも認められる国際的なスポーツになっているということがわかります。

さて、この木村政彦ですが、初めて知る人には刺激が強すぎるくらいの怪物です。もうね、うそでしょ、これ。漫画でしょ?いや、漫画でもここまでうそっぽいこと書きませんよ、というレベルの人物です。

とんでもなく強いんですが、その強さの秘訣が、1日10時間を超えると言われる練習量。現代でいう、超・オーバーワークをこなしながらパフォーマンスを落とすどころか鬼になっていく過程はおもわずため息が漏れます。毎日乱取りをしまくって、おとされ(失神させられ)まくって、夜も別のところへ出稽古に行き、夜中に大木を相手にくくりつけた帯を背負い投げの練習を超全力で1000回行い、しまいには大木が枯れてしまうという、うそみたいな伝説さえあります。

得意技の大外刈は、必ず相手が失神するので禁止、腕絡みというワザもどこからでもきめてしまい、亜脱臼するものが後をたたないので禁止、そんなこんなで15年無敗。木村の前に木村なし、木村の後に木村なしという、柔道の唯一にして絶対の頂点という人物です。

昔は柔道は国民的なスポーツで、競技人口がむちゃくちゃいたようで、技術や流派など、今ではもうないものが沢山あり発展していました。そういう過程も本書に詳しく書いています。

そんな木村は、カラッとした性格で、いたずらもかなり派手。うそでしょ?といいいたくなるようなエピソードがたくさんあります。これでも書ける部分しか書いていないとのことなので、なかなかの人物だと思います。しかしまたそれが魅力的なんですよ。男が男に惚れるというのはこのことでしょう。そういう人も実際たくさんいたようです。




師匠もまた魅力的

そんな木村政彦を育てたのが、牛島辰熊です。この人もまたとんでもない人で、鬼の牛島といわれた強烈で猪突猛進な人物です。この牛島が木村をくどいてなんとか弟子にし、とんでもないスパルタ練習で木村を、とんでもない怪物にしたのです。

この牛島さんも超・強烈なキャラで、東条英機暗殺計画など、かなりの思想家+行動家である意味日本の歴史に関わってしまうという場面もあります。

木村はいつまでたってもこの師匠には頭があがらないという生涯・師弟愛というか師弟の関係性もとても人間味があって面白い。

後半では、木村もさらに弟子を見つけ、岩釣兼生という弟子に引き継がれていきます。徒弟制度は、同じルールやシステムが続く限りでは、とんでもないパフォーマンスを出すすばらしい一面があります。現代ではすっかり廃れ、人材もグローバル化に巻き込まれ、コモディティ化も進み、競争力も弱まっている気がします。。おっと、これは個人的な意見でした。

とにかく、表の世界も裏の世界も巻き込んだ、ドタバタな格闘技界を垣間見ることができます。

格闘技の歴史がわかる

柔道は昔体育の授業でやったくらいで、昔からある日本の伝統なんだな、くらいの知識しかなかったんですが、とんでもなく複雑な歴史がそこにはありました。

なんと地球の裏側のブラジリアン柔術も、色濃く日本の柔道(柔術)が関わっていたんですね。そしてその裏にはブラジルへの移民など、歴史も関わってきます。

木村政彦の生きた時代は太平洋戦争があり、彼も兵役期間などもあり、複雑な時代でした。そんな中、みんな必至に生き、必至にもがき、それぞれの思いが交錯して今の格闘技につながっているんです。それがストーリーで、人々がいきいきと動いている世界を通して知ることが出来、自分の世界が広がりました。格闘技って知れば知るほど面白いものなんですね。

力道山とプロレス

力道山という人についてももちろんかなり書かれています。この人もやはりすごい人です。とくにビジネスという点でプロレスというものを日本で成功させた人なんですね。野心がとんでもなく、執念や欲がすごい。彼も必至に時代を生きていたんでしょう。あくまで本書では悪役という位置づけですが、それでも魅力たっぷりに書いています。

この力道山と、木村政彦の交わるストーリーを、是非味わってみて欲しいです。

著者の増田俊也という人は、司馬遼太郎が坂本龍馬や新選組にフォーカスを当てて、国民的なヒーローにした(再評価された)というのと同じように、とても大きな役目を果たしたと思います。ベストセラーにもなっているだけあって、本当におもしろいです!是非読んでみてください。

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) (新潮文庫)
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