目次
- 1 1を1000にするのと0から1を作るのは全く別物だというのを丁寧に説明している本
- 1.1 現在の企業価値は未来のキャッシュフローから来ている
- 1.2 ネットワーク効果を狙う企業はかならず小さな市場からはじめなければならない
- 1.3 規模拡大の可能性を最初からビジネスデザインに組み込むべき
- 1.4 市場拡大の順番というのは意識して競争を避けろ
- 1.5 ヨーロッパ人のバケーションが長い理由
- 1.6 あいまいで楽観的な未来には金融業が強い
- 1.7 起業は自分でコントロール出来る。少なくともサラリーマンのように偶然という不公平を拒絶できる
- 1.8 べき乗則を考えるべき
- 1.9 人が語らない真実にこそ、どんな会社を立ち上げるべきかのヒントがある
- 1.10 誰と働くかというのは非常に重要なこと
- 1.11 待遇に惹かれてくる人材こそ、もっとも必要でない人材
- 1.12 営業は実は最も大切
- 1.13 テクノロジーの進歩が人間の仕事を奪うという考え方ではよいサービスはできない
- 2 後半はネタ切れというか失速気味
- 3 素晴らしい翻訳。外国の本という雰囲気はそのままに非常に読みやすくなっている
この間のamazon prime dayで入手した本です。なかなか評価もよく、私は知らなかったのですが、アメリカではフェイスブックのエンジェル投資家としても超有名なピーター・ティール氏の本です。彼はペイパルを立ち上げた創業者で、今は投資ファンドをやっている典型的な超・成功者という人。つまり、言ってしまえば、成功者が語る成功本というジャンルですかね。
1を1000にするのと0から1を作るのは全く別物だというのを丁寧に説明している本
気になった箇所を羅列して書きなぐっていこうと思います。
現在の企業価値は未来のキャッシュフローから来ている
たとえば、twitterは赤字なのに対して企業価値は高い。これは、その後10年15年後にキャッシュフローが大きくなっているだろうという予測から高くなっている。それにたいし新聞などのメディアは、将来的なキャッシュフローは先細りすることが予想されているので現在の企業価値が低くなる。
ネットワーク効果を狙う企業はかならず小さな市場からはじめなければならない
ネットワーク効果とは、使う人が多くなればなるほど、ますますそのサービスの価値が高まる効果。フェイスブックなどはみんなが使えば使うほど使う価値のあるサービスとなるが、いきなり誰しもがつかえるような広い市場を狙うのではなく、小さなネットワークを独占し、広げていかなければならない逆説的な事実がある。ただ、著者は本書の中でリーンスタートアップのことをボロクソに言っている。ある意味、リーンスタートアップでいう小さな規模で探していくっていうことのようにもみえるがどう違うの?というか少なくとも近いのでは?とここは思いました。
規模拡大の可能性を最初からビジネスデザインに組み込むべき
ヨガスタジオを経営している場合、どれだけうまくいったとしても、スタジオやスタッフを増やしたとて1人で教えられる人数や利益率はあまりあかわらず規模の経済で拡大出来ない。数百万人のクライアントに価値を提供するほどの規模をめざせるかどうかというのは、ビジネスを起こす前からわかることであり、そういうデザインもちゃんとしておきましょうね、と。この辺はとてもよくわかる話なので共感した。
市場拡大の順番というのは意識して競争を避けろ
成功している企業はいずれも、まず特定のニッチを支配し(支配することが重要)、次に周辺市場を拡大するという規模拡大のやり方をしていると。とくに考えず順当に規模を拡大して市場を広げていこうとすると、コモディティ化の波に飲み込まれる。価格で競争してはいけないという重要性を何度も述べている。このあたりの感覚のするどさは非常に読者を引き込んでいる。ニッチを支配すると、独占して利益を確保できる。小さな市場独占を繰り返し規模を拡大すると、いくら大きくなっても、その時にはライバルがおらず、より独占しやすくなり有利にビジネスを展開し続けられる。ライバルに勝つ商品とかそういうことよりも実は市場の拡大のしかたこそ重要というのは分かる気がする。
ヨーロッパ人のバケーションが長い理由
あいまいな悲観主義の欧州は問題がおきてからしか対応しない。避けようのない衰退を前にしてできることといえば、とりあえずのんだり食べたり楽しんだりすることぐらいなので、長いバケーションをとると。無意識的なのか自意識的なのか、衰退を避けられないことを自覚しており、急にくるかゆっくりくるかはわからないからとりあえず酒でも飲もうぜ!ということなのか。なかなか面白い。
あいまいで楽観的な未来には金融業が強い
どうやって富を作り出すか皆目分からないときに唯一利潤をあげるのは金融業だと。よくわからない曖昧で非常に複雑なサブプライムローンなど金融はあいまいながらもしっかり金利で利益をあげていけるわけですからね。お金をつかってできることより、お金自体に大きな価値がでるからですね。今の日本もそんな感じがしますが。。
起業は自分でコントロール出来る。少なくともサラリーマンのように偶然という不公平を拒絶できる
自分でコントロール出来る試みという点で、確かに起業は魅力的ですよね。簡単ではありませんが、逆に言うとサラリーマンは「偶然」という不公平なものに振り回される、つまり人生の手綱を自分で握ることが出来ないということが強烈に伝わってきます。サラリーマンは昔から実力半分、運半分といいますしね。
べき乗則を考えるべき
1位にこそ、意味がある。ある市場のトップは、その他全社の売上をあわせたものよりもおおい。世の中は思った以上にべき乗則があてはまるというのはなかなか一般常識じゃないんですね。なぜなら義務教育でそうでないように刷り込まれているから。本書ではそこをうまく説明されています。
人が語らない真実にこそ、どんな会社を立ち上げるべきかのヒントがある
自然が語らない真実というのを人は追い求めがちで、そちらこそが重要という人が多いが、人が語らない真実も重要だという話。人の秘密を明かすのにりっぱな学歴などいらないからなめてる人多いけど、実はそこにこそ市場を独占出来るヒントが多いのでは、という展開はどことなくはっとさせられる。
誰と働くかというのは非常に重要なこと
職場にいる間に長続きする関係が作れないなら、時間の使い方を間違っていると。時間はいちばん大切な資産だから。そう、そうなんです。。
待遇に惹かれてくる人材こそ、もっとも必要でない人材
最近はランチ無料とか酸素カプセルとか話題になる起業も多いですが、そういうのに憧れているという部分がアナタにあるなら、アナタこそ必要ない人材でしょうと言われているようでドキッとした。
営業は実は最も大切
いい製品さえ作れば営業なんていらない。というエンジニアは分かっていない。売れる製品さえあればいい成績だせるのに、という営業はわかっていない。売り込みというのは決してなめてはいけない。真剣に売り込みを考えなければいけない。
テクノロジーの進歩が人間の仕事を奪うという考え方ではよいサービスはできない
人間の仕事のながれを変える、補助するというのがよいサービスで、技術だけ突きつめていく開発ではなく価値を生み出す開発をしなければならない。機械学習やビックデータを著者は批判している。考える軸がそうじゃないよ、ということが言いたいのでしょうね。
後半はネタ切れというか失速気味
後半は、エネルギーバブルについて詳細に見て行ったり、起業家となる人はどこか人とは違うその共通点を見ていったりと、よく見る話というか、スティーブ・ジョブズ関係の本などによくのっている内容と似たり寄ったりですね。もちろん書いてあること自体はいいことかいてますし納得感もありますが、多少ベタな内容というか。
素晴らしい翻訳。外国の本という雰囲気はそのままに非常に読みやすくなっている
関 美和さんという方が翻訳されていますが、経歴もスゴイ方ですが、文章の完成度も非常に高い。スラスラ読めます。翻訳のすばらしさというのは良い本ほど気付きません。その良さというのは逆説的ですが、酷い翻訳の本を読めば読むほど感じられるようになります。日本語が意味不明や不自然な文章でイライラすることなく読めますし、著者の熱もうまく伝えるような表現をしています。すばらしい。
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