風が強く吹いている 三浦しをん 感想

この本は陸上部のない大学に通う10名の同じアパートに住む住人が1年をかけて箱根駅伝を目指すという青春物語です。

私はマラソンをしません。ジョギングランニングが流行っていますが、全然運動しなくなって(まずいなと思いながらも)もう何年も経ってしまいました。

箱根駅伝も見ていないような私ですが、帯の”背中を押してもらえた作品第一位”、というのをみてなんとなく買ったんです。

結論から言えば、本当に買ってよかった。最高に面白かったです。

箱根駅伝は10人で10区を走るということすら知らない私は箱根駅伝とは何かということも含め全てが新鮮でした。知らない分野の本を読むのはこういうところがまた楽しい。

当然、登場人物が10人以上は出てくるのですが、この10人は同じボロアパートに住む寛政大学の学生。それぞれ皆個性的ですが、さすがに10人もいると、なかなか区別のつかないキャラが出てきます。結局それが最後まで続きました。このキャラとこのキャラの区別があまりつかない(というか特徴が微妙)・・という点で、残念ながらそこまで物語に没入することが出来ない部分があったのも事実です。(人の名前が覚えられない人なんです、、)

ただ、それが全く問題にならないくらい物語がおもしろすぎます。心臓がバクバクが避けられないシーンがかなり登場します。

前半は運動の経験あるなし色々いるメンツをまとめあげて箱根駅伝に挑戦するまでのストーリー展開で、長距離走とはなにか、箱根駅伝とはなにかを緻密に織り交ぜ、読者と一緒に学びながら進んでいきます。後半では、予選会、本戦と展開していきます。

前半でしっかり把握した上で後半のレースを読むと、どうなるんだ、どうなるんだと、本を読むのが止められません。私は予選会が一番緊張しながら読んでました。心臓に手を当てるとかなりバクバクいってます。もう11人目の選手になってます。

風が強く吹いている (新潮文庫)

マラソンとは、現代では自分のペースを厳密に測り、知り、ペースを守りながら黙々と走り続けるスポーツです。そういう意味では走る前から結果がある程度わかる競技です。距離も長いので、事故などなければ自分のタイムに安定して収束してもよさそうなものですが、そこが駆け引きやレース展開でかなり結果が変わってくる、ドラマチックな競技です。

おとなになって社会に出ると、なかなか利害関係なくチームで1つの目標を純粋に目指すことが出来なくなります。箱根駅伝は1つのコースを10区に分けてタスキをつないでいくレースです。つまりどこかでだれか1人が棄権すれば、どんなに速い人が揃っていてもそこで終わりなわけです。チーム全体として最適化を図る必要があります。加えて箱根駅伝などよく分からない若者が1年で目指すわけです。感情のぶつかりや、努力とは何か、才能とは何か、という事を若者が体験していく様を読むと、ある程度歳のいった世代はグッとくるのではと思います。若いうちは1年で目指すといっても空想物語ではない部分もあります。それだけ先を読みきれない可能性を秘めているわけです。その魅力がたっぷり楽しめます。

レース本戦になると、個人1人1人が走りながら、個人の背景や感情にフォーカスを当てながらレースが展開します。また心臓をバクバクさせながら読まなければなりません。主人公の走(蔵原走)、主将のハイジ(清瀬灰二)の走りに来たときには、一旦本を閉じて深呼吸が必要です。

***

物語を読み終えると、純粋にやりたいことに向かって全力で一心不乱に、生活の、人生の全てをかけて挑むことの純粋で崇高な行為に強いあこがれが出てきました。いつもそう思っているつもりですが、あらためて、

頑張ろう

と思わせてくれます。そういう意味では何かに挑戦する人、やろうか迷っている人に読んでもらいたいですね。

ちなみに、私は人生で1度だけランナーズハイ、もしかしたらゾーン?的なものにはいったことがあります。学生時代運動部に所属しており、走りこみは毎日していましたが、長距離走はキライでした。学校ではマラソン大会という嫌なイベントがあり、だるいなー真面目にやってられないわ、と最初は友達と話しながら軽く流すつもりで走っていました。折り返し地点に近づくと、すでに折り返してきた先を走る友人の留学生が挑発的な笑顔で親指を立ててすれ違いました。

ここでカチンときた(というか、一生懸命走っている彼を見て、なのかか今では曖昧ですが)本気で走ってみようと、急にペースアップして走り始めました。そこからははっきりと今でも記憶に残っていますが、不思議と走っても走っても疲れないんです。あ・・なんだこれ・・・と思いながら次々と人を抜いていき、その留学生の彼も抜き去り、さらに人を抜かして結局上位10%に食い込む事ができました。まだ走れそうでした。もっと長ければ・・否、もっと最初から全力で挑めば・・と後悔した記憶があります。

そういう昔の事を思い出したり、今現在についてももっと歩いたりしないと、、と反省しとります。

キラキラした人たちと、ドキドキするストーリーは、読んで損することはないはずです。

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