斜陽 太宰治 言葉の意味を調べたらこの作品で意味が生まれていた

斜陽(goo辞書)
1 西に傾いた太陽。また、その光。夕日。夕陽 (せきよう) 。斜日。
2 勢威・富貴などが衰亡に向かっていること。没落しつつあること。「―産業」
しゃようぞく【斜陽族】
第二次大戦後、世の中の急激な変化によって没落した上流階級の人々。没落階級。
[補説]太宰治の小説「斜陽」から生まれた語。

私は、「斜陽」という言葉を、衰退していくという2の意味だと思っていましたが、元々は字のごとく日が落ちていく、沈んでいく様を表す言葉だったんですね。

で、その当たり前に使っていた意味の斜陽は、なんと太宰治の小説「斜陽」から生まれた語というじゃあありませんか。

私は、何も知らず、読み終わってまずしたことが、斜陽を辞書で調べることだったんですね。辞書はどういう意味なんだろうと。そうしたら、どういう意味も何も、この小説からきたっていうじゃあありませんか。そらもうビックリですよ。つまりこの小説を全て読んだ人だけが、真の斜陽の2番の意味を知るということですね。この小説の雰囲気・空気感・人の生活・時間軸・・ニュアンスも含めて、明日からきっとうまく「斜陽」という単語を使えると思います。

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敗戦後、貴族が落ちていく様が描かれた作品

太宰治は人間失格しか読んだことなかったと思います。週末にひたすら読書をしていまして、一気に何冊か読んだんですね。kindleはそういう無料作品で過去の名作を読むのに使おうかなと思っていまして、コツコツとダウンロードしては読んでます。やっぱり紙の本がいいですよ(ま、その議論の今回の本筋ではないので割愛)。

物語は戦争で敗戦後、貴族が社会にほっぽり出されて、お金に困りながらも、本質的にお金の怖さなどを知らずにきたものだから、わかっちゃいるけどわからない、といった感じでじわじわと追い詰められていくストーリーです。あまりのテンポの良さと無邪気でインテリジェンスで人がいいアホで魅力あふれる家族を見ていると、どうにも止まらなくなって一気に読んでしまいました。おかげで夜中になってしまった。マズイ。

読んでいると、ダメーーー!そんなことしてたら、だめえええ!と言いたくなってきます。当たり前にダメなことだが、うっすら分かっているが、やめられない。計画性がないというより、貴族という人種はこういうものなのだ、ということを周りの変化からその貴族性というものを浮き彫りにするといった描き方をしているのだと思います。

しかし、大人になるまで(おとなになっても)、お金の事を考えずにお手伝いさんもいて生活できていた人たちがいきなり社会にほっぽり出されたって、どう考えても先はみえています。それは現代でも同じでしょう。今の時代は下手したらもっと酷いことになるかもしれません。




家族のそれぞれが皆違うがどことなく家族を感じさせられる悲しさ

うまく言えませんが、家族の弱さ、もろさをうまく描ききっていると感じるストーリーです。母親は天真爛漫そのもので、2人の子どもに大きな影響を与えています。真面目に現実を考えると、登場してくる女の振る舞いがあまりに女ぶっている感じがして、その辺が、ふーん、太宰治の女性観って、こんな感じなのか・・とそういう見方を私はしてしまいます。いかにも男が書いた女のセリフ・仕草・思想というか。

そしてダメな人間の内面と、その内面からくる所作・行動に関して言えばもうプロとはこういうものかという感じ。クズ感の自然さといったらハンパない。

家族は行動を見るとダメなんだけど、どうもそう見えない、不思議な魅力に満ち溢れています。だからこそ、一気に読んでしまったんでしょうけど。

とても読みやすい本ですし、落ちていくんですが、澄み切ったアルコール度数の高い蒸留酒のような作品です。美しくも、飲めばガツンとくるが、長くは留まらず、駆け抜けていく。

是非読んでみてください。

太宰治『斜陽』 2015年9月 (100分 de 名著)
NHK出版 (2015-08-22)
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